第一話 俺は知りたくなかった。

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保健室に連れられた俺は、ベッドに入るなり気づけば夢の中へと迷い込んだ。 瞼が重い。頑張って目を開けようとしても重さに負けてしまう。 どうしても目を開けたくなかったのだが、眉間にしわが出るように重い感覚だけが残った。何も見えないはずなのに、声だけが頭に響いてくる。 知らない女の子の声が聞こえてくる。 「・・ちゃ・・。」 なんだ? 「ちゃんっ!」 え?なんだよ。眠いんだよ。やめろよ。 「お兄ちゃん!」 はぁ!?誰がお兄ちゃんだよ。俺に妹はいないっての。 「お兄ちゃん!もう、行くよ!」 目を開けられない俺の腕を引っ張る感覚だけがわかる。 「会場はここ!もう、BLだからって甘くみないでよね!まじで声最高だから!」 何がBLだよ。俺、男は無理だっつうの。 「体の弱い主人公を支えるみんながカッコイイんだよ!私は、もちろんこうちゃん×主人公が大好きなの~。」 なんの呪文だよ。イケメンには可愛い女の子に決まっているだろう!っていうか、お前誰だよ。なんで俺、目が開かないんだ? 「ほら、イベント始まるよ。あれがこうちゃんの声優さんだよ。イケボ最高。まじで、ごちそうさまです!」 男の声なんか知るかよ。あれ?なんか女の子の声しないか? 「主人公の声は、本当に女の子みたいだよね!あれで男なんだから、最高かよ!まじであの二人でくっついててほしい~。」 やめてやれ。ファンタジーだけで留めてやれ。たしかに女の子みたいな声だな。ってあれ?なんだ、ちゃんと男の声も出せるハイスペック声優じゃん。さすが俺の妹だよ。声優の見る目、聞く目あるじゃん。え?妹?俺に妹はいねぇって。 「お兄ちゃん、今日は本当に付き合ってくれてありがとう。」 なんだよ。気にすんなよ。知らないイベントだけど、初心者にもわかりやすく説明入れてくれるから俺も楽しいよ。へぇ~私立行進高校か。BLってのはあれだけどさ、内容は面白そうだな。絶対ゲームはしないけどな。男を攻略したくないし。あ、こうちゃんっていうのは大山光輝のことか。私立行進高校を主席で入学・・・優しくて、頼れる人気者。勉強と運動は出来ても天然で、動物が苦手なのか。俺の親友にそっくりじゃねぇか。え? 驚きと共に目が開くようになった。
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