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イベント会場の景色が広がる。どうやら、ライブ中のようだ。席はちょうど真ん中あたりで、ペンライトを持った周りの女子から黄色い声援が止まらない。俺はただ茫然とそこに立っていた。ペンライトの光がステージを一層華やかにする。
ぐらりと体から力が抜ける。そしてすぐに俺の瞼は重くなって真っ暗な中に引きずり込まれてしまった。
「んっ・・。」
俺は、気づけば自分の声が少し出ることに安心していた。
良かった、俺死んだのかと思った。いや待て、なんか死んだ気がする。あれ・・俺死んだ気がするってなんでだ?
「圭!」
はっと自分の名前を呼ばれて、重い瞼が開いた。
「良かった!」
そこには、俺の親友が抱き着いて背中を痛いほどバンバンと叩いてきた。あまりの勢いに咳が出た。
「・・・光輝?」
「そうだよ!本当に大丈夫かよ!?自分の名前わかるか?」
「はぁ?けいだよ。宇津野圭!」
「正解!はははっ。」
「なんだよっ。あれ、ここどこ?」
「保健室だよ。」
「え、なんで?」
「圭がいきなり倒れるから運んできたんだよ。もう始業式終わって、帰る時間なんだけど。圭、ずっと眠ってたってさ。体調悪いなら言えよな!心配しただろう。」
「あ、ごめん。」
俺の親友である、大山光輝の顔を見る。
あれ?光輝ってこんな顔していたんだ。あれ、なんか顔を初めて見た気分なんだけど。
よく見なくても、いわゆるイケメンだよな。俺よりも身長高くて、女受けの良さそうな顔してる。あれ、なんか俺光輝のこと知っている。なんかこの声にも聞き覚えあるな。あれ?俺大丈夫か?生きてるか?
夢ではないのかと自分で頬をつねってみた。
痛いな。光輝に不信な目を向けられているな。すまん。なんかお前、見たことあるBLゲームの登場人物かと思ったわ。親友をBLゲームの登場人物にするなんて俺って最低だな。
「圭、ごめん。急いできたから教室に荷物置いてきちゃった。お前の鞄はここにあるから、ちょっと待っててくれないか?」
「あ、ああ・・・。」
そう言って俺は光輝の制服の裾を掴む。
「あの・・圭?」
「えっ?」
まだ定まらない焦点に、名前を呼ばれて光輝を見る。
自分で自分が何をしていたか気づいていなかった。俺は光輝の制服の裾を掴んで止めていた。
「あっ!ごめん。」
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