第一話 俺は知りたくなかった。

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慌てて掴んでいた制服を放した。不信な行動をした俺に、怒るでもなく光輝は笑いかけてくれた。 本当にいいやつだな。 保健室に一人、置いてかれた俺は周りを見回す。 始業式だったというのに、おそらく先輩にあたる人たちが、グラウンドで部活をおこなっている姿が目に入る。運動部なのか叫ぶ声が聞こえてくる。 窓を開けて空気を吸い込む。深呼吸をして落ち着こうとした。 「BLゲームの世界なんて嫌だ~~~~~~~~~~!!!!!」 いくらか叫んだおかげか少し落ち着いてきた。 俺は少し頭の整理がついてきたようだ。もしかしたら転生ってやつなのかもしれない。これは夢か?夢であってくれ。いや、きっと長い夢を見ていたんだ。さっきの映像は夢に違いない。ここが男子高だからってBLゲームの世界なんてありえない。いや、ここは冷静になろう。たとえ俺の考えが合っていたとしても、宇津野圭は登場人物ではないんだ!俺には関係ない! 心の中で叫んだ。制服のネクタイをグイグイと緩めて、また深呼吸をする。 あれ?ってことは光輝って・・・。いや、まさか。男が好きとかないよな。ありえない。あのモテそうな光輝だぞ。女がほっとかないだろ。あ、ここ男子高だ。いやいや!ありえないって!あの光輝だぞ!?まだあんまり知らないけど、男に走るわけない! グルグルと思考が回転している。 いろいろ考えすぎて、どうやら30分ほど時間がたっていたらしい。ガラガラと保健室から人が入ってくる音が聞こえて我に返った。 「悪い圭!お待たせ。」 「おっ、おお・・・。」 額から汗が一滴流れる。 「大丈夫か?」 「ああ、平気、平気。俺、元気だけが取り柄だし。」 苦笑いで答える。 「教室に、お前と一緒で体調崩した生徒がいたから、遅くなった。」 「あ、そうなんだ。そいつ大丈夫だったのか?」 「ああ、しばらくしたら元気になったみたいだ。」 入学式当日に、どんだけ人助けるんだよお前は。 一緒の寮の部屋でもある光輝と俺は、ゆっくりと寮のほうに歩き出した。 「今日はゆっくり休めよ。」 「ああ。」 「担任には俺が言っといたからな。」 「ははっ。何から何までありがとう。」 「これは貸しだからな!」 「はいはい。」 俺は適当に相槌した。
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