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慌てて掴んでいた制服を放した。不信な行動をした俺に、怒るでもなく光輝は笑いかけてくれた。
本当にいいやつだな。
保健室に一人、置いてかれた俺は周りを見回す。
始業式だったというのに、おそらく先輩にあたる人たちが、グラウンドで部活をおこなっている姿が目に入る。運動部なのか叫ぶ声が聞こえてくる。
窓を開けて空気を吸い込む。深呼吸をして落ち着こうとした。
「BLゲームの世界なんて嫌だ~~~~~~~~~~!!!!!」
いくらか叫んだおかげか少し落ち着いてきた。
俺は少し頭の整理がついてきたようだ。もしかしたら転生ってやつなのかもしれない。これは夢か?夢であってくれ。いや、きっと長い夢を見ていたんだ。さっきの映像は夢に違いない。ここが男子高だからってBLゲームの世界なんてありえない。いや、ここは冷静になろう。たとえ俺の考えが合っていたとしても、宇津野圭は登場人物ではないんだ!俺には関係ない!
心の中で叫んだ。制服のネクタイをグイグイと緩めて、また深呼吸をする。
あれ?ってことは光輝って・・・。いや、まさか。男が好きとかないよな。ありえない。あのモテそうな光輝だぞ。女がほっとかないだろ。あ、ここ男子高だ。いやいや!ありえないって!あの光輝だぞ!?まだあんまり知らないけど、男に走るわけない!
グルグルと思考が回転している。
いろいろ考えすぎて、どうやら30分ほど時間がたっていたらしい。ガラガラと保健室から人が入ってくる音が聞こえて我に返った。
「悪い圭!お待たせ。」
「おっ、おお・・・。」
額から汗が一滴流れる。
「大丈夫か?」
「ああ、平気、平気。俺、元気だけが取り柄だし。」
苦笑いで答える。
「教室に、お前と一緒で体調崩した生徒がいたから、遅くなった。」
「あ、そうなんだ。そいつ大丈夫だったのか?」
「ああ、しばらくしたら元気になったみたいだ。」
入学式当日に、どんだけ人助けるんだよお前は。
一緒の寮の部屋でもある光輝と俺は、ゆっくりと寮のほうに歩き出した。
「今日はゆっくり休めよ。」
「ああ。」
「担任には俺が言っといたからな。」
「ははっ。何から何までありがとう。」
「これは貸しだからな!」
「はいはい。」
俺は適当に相槌した。
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