第一章不在の証明

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第一章不在の証明

恐ろしい夢を見た。起きた瞬間に、驚いて、美雨は何が恐ろしいか、忘れてしまっていた。ただ、冷や汗をびっしりかいていた。隣には、理がその長い手足をおりまげて寝ていた。ベットの脇の時計は真夜中の三時を指していた。外はまだほの暗い。身体に、まだきのうの夜のセックスの痕が残っていた。 理を愛するときが、彼と親和するとき。私の愛する人は、いつも向こう側をみていた。私も、彼の中に、別の彼をみていた。愛し合うとき、それは確かめる為の行為だった。自分自身を。自らの肉体の、しなやかさ、筋肉の質感、柔らかさ…。理は、自分自身でありたかった。誰でもなく、彼自身に。私は、私だった。自分以上に、彼を愛してなかった。欲望は果てて、破滅に向かっている。美雨はベッドから出て、口をゆすいだ。 未雨は、朝までぼおっと深夜と早朝のさかい目のTV番組を見て、7時になると、早めに大学へ出かけた。スマホのカレンダーを見て、夜、蓮と会う約束があったことを思い出した。寝不足だが、女友達に会うのは重要だと考えた。     
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