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「お客様、コーヒーは直ぐに用意させて頂きます。温泉施設は、地下一階にございます。入浴用品は備え付けのものをご利用ください。それではごゆっくりとご休憩ください」
「ちょっと待ってくれないか。このホテルの経営者を呼んで頂きたいのだが…」
「なにか私に粗相でもございましたでしょうか?」
「そうではないんだ。どうしてもお願いしたいことがあるんだ。急を要しているんだ。ロボットの件とでも言って頂けませんかな」
「はあ?ロボットですか?・・・ そうですか、そうですか、承知しました」
こいつ、呆気にとられているようだ。でも、仕方なかろう。
「君、べッドが見当たらないが、なにかの間違いかな?」
「あっ、失礼致しました。部屋を間違えたようです。向かい側の部屋でした。申し訳ございません。移らせて頂きます」
「この部屋で構わない。仮眠はしないから。それでは、よろしくお願いします」
部屋を間違えただと?話にならん。まあ、そんなことはどうでもよいが、経営者は来てくれるだろうか?たぶん怪しまれるだろうな。アンドレを信じるしかない。早く来てくれ。俺は急いでいるんだ。
「お客様、お顔がジャン・ギャバンに似ておられますね。素敵です。では、ごゆるりと…」
俺の顔がジャン・ギャバンに似ているだと?冗談も程にしろ。でも、悪い気はしないがな。もしかして、あいつは男が好きなのか?俺にはそんな趣味はないからな。・・・ まさか?隣の部屋から人の声が聞こえる。なにがセキュリティだ。笑わせる。こっちの話し声も筒抜けなんだろう。始めから盗み聞きをしているのか?音楽でもかけてこちらの物音を聞こえないようにしてやろうか。確か、この部屋には有線放送が設置してあると、あの受付スタッフは言っていた。アンプはどこにあるんだ。あー、あそこか…。
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