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「えっ、これは、これは、驚きですね。なんでまた欠陥のある従来機のシステムを望まれるのですか?理解できませんね。最新バージョンのシステムの方が性能的に良いに決まっているではありませんか。お気に召されないのですか?」
「俺にも好みがあるんじゃ。その最新バージョンシのステムなるものは、俺の好みに合わないんじゃ。従来機のロボットはいつも沈黙気味で上品な雰囲気が漂っていた。それと較べると、この最新バージョン機はつぶやくどころか喋り過ぎなんじゃ。それに厚かましくてガラが悪くって腹に据えかねているんじゃ。声も男みたいな低音だし、録音されている俺の声音の声質をコピーしたようだが、これでは気持ち悪くてたまりませんわ。まるで女装した厚化粧の男みたいなんですわ。従来機の、寡黙で、奥ゆかしく、可愛いアンドレに、失礼、俺はあの従来機のロボット妻をアンドレと呼んでいたんだが、是非ともそのアンドレに戻して頂きたい。それが俺の願いなんじゃ」
「そうですか。そのアンドレは壊れかかっていますよ。それでよいのですか?」
「仕方ありませんな。想い出だけでも残せればそれで構わんのじゃ。壊れかかっていても俺との営みの痕跡は美しい想い出としてアンドレの身体に刻まれておるからじゃ…」
「はあ、そうですか。アンドレは美しい想い出が刻まれた置物になるという訳ですか。お客様は、その置物を眺めては美しい想い出に浸られる。それは墓地で亡き人を偲ぶのと何ら変わりませんよ。・・・ なるほど、それはそれで結構なことだとは思います。でも、置物はどこまでも置物ですよ。本当にそれでよいのですか?・・・・そうですか、そんなに従来機のシステムが好いのですか。すっかりお客様用にカスタマイズされてしまったようですね。それなら、ひとつご提案があります」
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