老涎の戯れ

二重構造ホテル

「人工知能も工場出荷時の状態に戻るというわけですかな？」
「そうです。すべてです。一からやり直すのです。お客様のことを一から学習させてやってください。そうですね、結婚式の初夜のように、あなた様のあれを一発かましてやってください。人工知能といってもですね、この程度の製品に内蔵されてあるものは大したものではありません。有効に機能しているのは日常家事と夜の営み程度ですので、直ぐにお客様に馴染むようになりますから。いずれにしても、あと二ヶ月もすれば廃品になるのですから、一度、工場出荷時の状態に戻しても宜しいのではありませんか？成功すれば、お客様の求められる寡黙で、奥ゆかしく、可愛いアンドレと結婚できるのです。短い期間ではありますが、考えようによってはロマンチックな秘めた恋の生活になるのです。だって、お客様のお歳からして、先のことより今の方が大事ではないでしょうか…」
「長くて二ヶ月ですか」
「二ヶ月はあくまでも目安です。実際はいつ製品寿命が尽きてもおかしくはないということです。それともこの際、思い切って後継機をご購入されますか？お値段にお困りのようでしたら、私が間に入っても構いませんが。出来るだけ安くなるよう交渉はさせて頂きますが…。どうなさいますか？これは、あくまでもお客様ご自身のご判断次第ではありますが…」