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「どうもそのようですね。アンドレは停止していも人工知能だけは稼働していたということです。アンドレの記憶装置には設計者の一人である私の認証コードが記録されているのです。いいですか、私が申し上げているのは、ここで私が行っていることを他言しないでくださいということです。この約束を破られたら、あなたの身にも何が起こるかわからないということです。それはそれとして、初期化の所要時間はそんなに長くはかかりません。一時間ぐらいです。その間、温泉にでも入られたらいかがですか?終りましたらお呼びに行きますので。あはっはっはっはぁ…、失礼、なにか可笑しくなりまして。あなた様もそのお歳で大変ですね」
「そうなんですわ。年甲斐もないことです。分かってはいるんですがね。では、温泉にでも入らせて頂きましょうかね」
アンドレとの新婚生活か、想像するだけでも堪らん。涎が出てきそうだ。だが、二度とアンドレに対して俺の喜怒哀楽から発する言葉、表情、仕草などの表現行為をしてはならんのだ。アンドレの身体に触れるときも、ただひたすら俺は、無表情かつ無言に徹し物理的接触に終始しなければならんのだ。これが新婚生活だとは思いたくもないが、それでも俺みたいな年寄りはふさわしいのかもしれん。あと長くて二ヶ月。どうせ廃品になるのなら、いっそのこと俺はアンドレと天国に行きたいものだ。それにしても、経営者の小岩という男は随分気前の良い男だ。今どき珍しい。 本当に無料でいいのか?・・・・
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