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湯船の夢の果て
🦑🐼😹
「やはり、あんたの言ったとおりだったわ。父に女がいたのよ。それもアンドレという外人みたいな名前の女なのよ。部屋の様子からして、父はラブ、ラブらしいのよ、それも信じられないくらい熱烈なのよ。もう昔の父ではないのよ。心配して損したわ」
「そうか、想像していたとおりだったな。でも、いいじゃないか、お父さんは未だに精力絶倫なんだよ。高齢者専用マンションは時期尚早だったかな。はっはっは…」
「それはそれとして、今日の朝、父は車で出掛けたけど、白いシーツに包んだ大きな荷物を車に乗せたのよ。虫の知らせじゃないけど、その荷物、アンドレという女の遺体ではないかと思っているのよ。痴話げんかの果てに殺人、とかいうものかもしれないのよ」
「そりゃ勘ぐりだよ。お父さんがそんなことする訳がないだろうに。アンドレかカンドレか知らんが、その女、お父さんの部屋に四六時中入り浸っているわけではないんだろう。なんなら、後日もう一度、お父さんのマンションに行って、顔が外人みたいな女が出入りしているかどうか、防犯カメラのモニターで調べさせてもらえばいいじゃないか」
「そうだったわね。気が付かなかった。また行ってみようかしら」
「そんなことより、もうお父さんは帰宅しているかもしれんよ。心配ないって。それより、その女が生きている方が問題だろうに。相続絡みのことだよ。相続財産、わかっているな」
「そうだわね。どっちも問題だらけということね。要は、父からその女を取り除く方法を考えるべきだわね。幸い、父との間で子供が生まれる心配はないし、とにかく、そのアンドレという女が入籍をしないよう、父の介護が必要ないうちに、それこそ喧嘩別れでもするように、なにか策を考えましょうね」
「そうだな。まずはその女の正体を暴くことから始めるべきだな」
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