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🦍🐖🐗
温泉は地下にあると言っていたな。廊下に出たが地下への階段はどこにあるんだ?・・・ あれか?左手の突き当りの壁に階段を示す表示板がある。すぐ横にある階段を下りて行けばよいのか。
突き当りの壁鏡に映る僕の身体、ああ、なんということだ。短足、胴長、ずんぐり、張り出した下腹。あー、不恰好この上ない。ガウンなど着れるか、こんな見てくれなら着替えない方がましだ。久しぶりの温泉だと言うのに、いつからこんな体形になったんだ。ここ最近の暴飲暴食が祟っているんだな。ああ、面倒くさい。いっそのこと素裸で行ってやろうじゃないか。幸い、俺以外に客はいないようだしな。
薄暗い階段だ。天井に蜘蛛の巣が掛かっている。本当にこのホテルに温泉などあるのか?なんか嘘っぽい。近くの渓谷を流れる水を引き込んで沸かしているだけだろう。どこか今時よくある偽物温泉のような雰囲気が漂っている。
踊り場がぼんやりと明かりに照らされている。壁に何か掛かっている。肖像写真のようだ。金色のゴシック模様の額縁に入っている。和服姿の熟年男の胸像写真だ。やけに毳々しい画像だ。安っぽいアルミ製のネームプレート、『経営者:佐渡ヶ嶽甚之助』、どうしてだ?経営者が二人もいるのか?このホテルはどうなってるんだ。もしや、この写真は前の経営者のものなのか?写真を掛け変えるのを忘れているのか?なにか怪しいな。それにしても、肥え太った丸顔、殆どしわがない。しかし、情けなさそうな童顔。それに垂れ下がった太く長い眉毛、小さな二重の瞳に長いまつげ、不釣り合いな大きな鼻と大きな口に分厚い唇、どこかしら世間を小馬鹿にしたような笑み、ツルツルに禿げている前頭部がまぶしい。佐渡ヶ嶽甚之助、どんな性格なんだろうか?
そもそもなぜ、経営者の肖像写真を地下へ通じる階段の踊り場なんかに掛けなくてはならんのだ。あの小岩という経営者の肖像写真は、一体どこに掛けられているんだ?エントランスにも表階段や通路にも見当たらなかった。おかしなホテルだ。あの従業員も部屋を間違えるし、これでは素人経営丸出しだ。だが、よけいな詮索はご法度なのだ。用が済めば、俺は生まれ変わったアンドレを連れて、ここからさっさと引き上げる、ただ、それだけのことだ。どうやら地下に着いたようだな。温泉特有の硫黄の匂いがする。俺はすりがらす 🦍🐖🐗
温泉は地下にあると言っていたな。廊下に出たが地下への階段はどこにあるんだ?・・・ あれか?左手の突き当りの壁に階段を示す表示板がある。すぐ横にある階段を下りて行けばよいのか。
突き当りの壁鏡に映る僕の身体、ああ、なんということだ。短足、胴長、ずんぐり、張り出した下腹。あー、不恰好この上ない。ガウンなど着れるか、こんな見てくれなら着替えない方がましだ。久しぶりの温泉だと言うのに、いつからこんな体形になったんだ。ここ最近の暴飲暴食が祟っているんだな。ああ、面倒くさい。いっそのこと素裸で行ってやろうじゃないか。幸い、俺以外に客はいないようだしな。
薄暗い階段だ。天井に蜘蛛の巣が掛かっている。本当にこのホテルに温泉などあるのか?なんか嘘っぽい。近くの渓谷を流れる水を引き込んで沸かしているだけだろう。どこか今時よくある偽物温泉のような雰囲気が漂っている。
踊り場がぼんやりと明かりに照らされている。壁に何か掛かっている。肖像写真のようだ。金色のゴシック模様の額縁に入っている。和服姿の熟年男の胸像写真だ。やけに毳々しい画像だ。安っぽいアルミ製のネームプレート、『経営者:佐渡ヶ嶽甚之助』、どうしてだ?経営者が二人もいるのか?このホテルはどうなってるんだ。もしや、この写真は前の経営者のものなのか?写真を掛け変えるのを忘れているのか?なにか怪しいな。それにしても、肥え太った丸顔、殆どしわがない。しかし、情けなさそうな童顔。それに垂れ下がった太く長い眉毛、小さな二重の瞳に長いまつげ、不釣り合いな大きな鼻と大きな口に分厚い唇、どこかしら世間を小馬鹿にしたような笑み、ツルツルに禿げている前頭部がまぶしい。佐渡ヶ嶽甚之助、どんな性格なんだろうか?
そもそもなぜ、経営者の肖像写真を地下へ通じる階段の踊り場なんかに掛けなくてはならんのだ。あの小岩という経営者の肖像写真は、一体どこに掛けられているんだ?エントランスにも表階段や通路にも見当たらなかった。おかしなホテルだ。あの従業員も部屋を間違えるし、これでは素人経営丸出しだ。だが、よけいな詮索はご法度なのだ。用が済めば、俺は生まれ変わったアンドレを連れて、ここからさっさと引き上げる、ただ、それだけのことだ。どうやら地下に着いたようだな。温泉特有の硫黄の匂いがする。俺は引き戸の扉をそっと開ける。
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