星に願いを

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星に願いを

   私の名を呼び空を見上げる。そんな君の視線に、触れてみたいと思った。 「……さっむ!」  鍵の壊れた扉を開き、二人で繰り出してきた校舎の屋上。隣の男は、冬の夜風に震える私をよそに、ひとり黙々と望遠鏡を設置している。 「……黒崎、」 「んー?」 「晴れて良かったね」 「んー」 「……」  今忙しいんだよ話し掛けんな、と言わんばかりに返される適当な相槌。私はやれやれと息を吐き、黙って空を見上げた。  雲ひとつない暗闇に浮かぶ、無数の煌めき。この辺りは街の明かりが少なくて、星が綺麗に見える。彼はこれに夢中なのだ。私にはよくわからないけれど。  ──天文学研究部。幽霊部員はそこそこいるけれど、真面目に活動しているのは二人だけ。  部長の黒崎、ヒラの私。星にあまり興味のない私を除けば、実質本当の意味での部員は黒崎ただひとりともいえる。  では、私は一体何なのか。……私は、そんな彼を観察するのが好きなのだ。  興味があるのは星ではなく、星を見る黒崎のこと。
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