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黒崎が語り掛ける星たちは、生きているように見えるのが、不思議。
息をしているのだ。絶えず呼吸を繰り返すように瞬きながら、彼の瞳の中で、夜空に浮かんでいる。
その目で私のことも見てほしいと、何度願ったか。彼への興味が好意へと変わったのは、いつからだったか。
「……オリオン座だ」
「うん」
「真ん中の三つ星まで、よく見えるね」
「うん」
──すばる、と。
彼は私を下の名前で呼ぶ。すばる──ギリシャ神話で、狩人オリオンに追われ鳩となって天に上った七人の娘たち、プレヤデス星団の和名。
以前、そう教えてくれた彼はなんだか楽しそうで。決して表情には出さないけれど、纏う雰囲気は穏やかで。男みたいだと思っていた自分の名前が、少しだけ好きになった。
いつになったら、彼は私を見てくれるだろう。私が隣にいることに気付いてくれるだろう。
もうずっとずっと、私は君のことだけを見てる。……ねえ、黒崎。
「……やっぱちゃんとコート着てくれば良かった」
「……」
「ねえ、一旦部室戻らない? 外寒すぎ。上着取ってこようよ」
突いても引っ張っても、彼は私の方を向かない。星だけ。彼には、星だけ。他には何も要らない、って。そんなの、わかってるけど。
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