星に願いを

5/8
前へ
/8ページ
次へ
 思考を巡らせながら、微かな変化も見逃さないよう、目を凝らして星々を見つめる。  そんな私の肩にふわりと温かな感触があり、振り向くと、──セーター姿の黒崎が、自分の着ていたブレザーを私の肩に掛けてくれていた。 「寒いんでしょ? これ貸す」 「……黒崎、風邪引くよ」 「俺は平気」  言いつつ、彼はまた望遠鏡を操作し始める。今度は月ではなく、小さな星たちの方にレンズを向けるようだ。  熱を、感じる。ブレザーから伝わる黒崎の温もり。自分の体の中からじわじわと沸き上がるような、この感情。  どうしていいかわからない。好きになりすぎて、気持ちのやり場が見つからない。 「黒崎、……星、好き?」 「うん」  私のことは? ──素直にそう聞けたら、どんなに楽だろう。  臆病者だ、私は。ただの怖がり。だって、黒崎がなんて答えるかなんて、もうわかりきっているから。  彼は私を見ていない。彼は私のことを何とも思っていない。私の一方的な片想い。  だから今も、こうしてただ隣に立って、空を見上げることしかできない。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加