ウゴの怪物

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ウゴの怪物

 大学生のK恵さんは塾講師のアルバイトをしている。  担当は中学受験に向けて塾通いを始めたばかりの小学校四年生のクラスで、まだまだ緊張感がないせいか、講義中も放課後の延長のようなざわつきがなかなか消えないのが悩みの種だった。 「怖いよな、『ウゴの怪物』」  その日、講義が終わった教室で、数名の生徒が輪になって何やら話していた。 「二組の林の兄ちゃんが見たんだって」 「スイミングの友達の友達も襲われそうになって、ダッシュで逃げたって」 「襲われたって、何に?」  物騒な単語を含んでいたのが気になって、彼らに声を掛けた。 「怪物だよ。『ウゴの怪物』」 「ウゴ?」 「先生知らないの? 今、日本全国で目撃されているんだよ。そいつに噛まれたら三秒で死んじゃうんだ」 「えー?」  一応は驚いてみせたが、K恵さんは内心では苦笑していた。そんな謎生物が存在するのだったら、あっという間にテレビやネットが取り上げているだろうし、警察だって動くはずだ。どこから出てきた噂かは知らないが、こんな荒唐無稽な話を信じているとはやはりまだまだ幼いんだなと。 「その怪物はどんな姿をしているの?」 「鮫の歯を持った巨大ミミズみたいなの」     
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