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「違うよ。666本の脚がある金色に光るムカデみたいな虫だよ。666は悪魔の数なんだ」
「黒い球体って説もあるよ。たくさんの黒い虫が固まってボールみたいになってるんだって」
生徒それぞれが違った事を言うので、実体がまるでつかめない。
「それってもしかして『イドの怪物』のことじゃない?」
古いSF映画に登場した、人間の潜在意識が産み出したというモンスター。それに基づいて、その人が恐れているものが具現化される「イドの怪物」的なモノが登場するSFやホラー作品が、その後いくつも出てきた記憶があった。まるで「雨後の筍」のように ――
―― 雨後の筍。 そのことわざを、先日の授業で教えた記憶が蘇り、K恵さんは思わず吹き出した。
「情報が交じっちゃってるんじゃない? 『イドの怪物』と『雨後の筍』が」
小さい頃、子供会などで「伝言ゲーム」なるゲームをやった。何人かで伝言を繋げていくうちに、最初のメッセージとは全く違う内容が最後の人には伝わっていて、「聞き伝え」なんて当てにならないんだなと悟ったことを思い出す。
「……違うよ。『ウゴの怪物』だよ。うごめいているんだ。うごうごって」
生徒の一人がやけに重い口調で呟くと、周りの子どももみな頷いた。その点は一致しているのか。
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