ウゴの怪物

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 ―― (うごめ)く。  仰々しい漢字が思い浮かび、K恵さんは背筋が一瞬ヒヤリとした。  その感覚が気のせいではなかったと知らされたのは、それから数週間ほど過ぎてからだった。  あれだけ騒がしかったクラスが、驚くほどに静かになった。生徒たちはおしゃべりひとつせず、黙々と授業を受けている。  だが何か違和感があった。生徒たちに、覇気というか生気が感じられないのだ。 (……あれは、なに?)  水を打ったような静寂のなか小テストを解く生徒たちを、教室の後ろから監視していたK恵さんは不可解な現象に気がついた。  テスト用紙に向かう生徒の首元。ミミズ腫れかと思った『それ』は、皮膚の内側を探るように動いている。  ある生徒は手の甲に、ある生徒は二の腕に、紐状に盛り上がった『それ』が蠢いている。  ――『ウゴの怪物』  生徒たちが噂していた謎の生物の名前が、K恵さんの脳裏に浮かんだ。 「先生、どうかしたんですか?」  感情の読めない声で尋ねてきた生徒を振り返ると、 「ひっ」  生徒の瞼の内側がピクピクと動き、赤黒い芋虫の様なモノが眼球の端に一瞬姿を見せたかと思うと、こめかみの内側を滑るようにして、消えた。     
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