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「な、なにを言って……」
異臭の元はどうやらこのキャリーバッグだった。薄汚れたバッグ。底が赤黒く染まっているのは、まさか血ではないのか?
「何番がイーイ?」
友人たちが語った『キャリーバッグの中身』が脳裏に浮かんだ。目の前のバッグの中に『それ』が入っているというのか? 選べと言うのか? そのバッグの中に入っているモノを? 番号で?
「何番がイ――――イ!?」
迫る老婆に背筋が凍る。むき出しにされたブヨブヨの歯茎が、腐ったゼリーのようだった。
考えろ。考えるんだ。
何番と答えればいい? 間違って答えて、恋人や家族の生首とご対面なんて冗談じゃない。
思い出せ。思い出すんだ。
最初に聞いたのは「若い男」の生首だった。次が「一番大切な人」。そして最後が――、バッグを持った女自身の首。この順番が正解なのか?
「何番がイ――――イィィィィィィィ!?」
狂ったように吠える老婆に詰め寄られ、たまらず叫んだ。
「三番! 三番で! 三番でお願いします!!」
「……三番、三番だね?」
グヒグヒと、老婆は下品な笑いを浮かべる。
「……三番は、お・ま・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ」
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