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母親が車で迎えに来てくれることになり、それまで保健室のベッドで休んでいるよう薦められた。
「若菜、大丈夫?」
心配してくれたのか、休み時間に美織が保健室に顔を見せた。
「ごめんね若菜、全部私のせいだ」
「え? なんで? なんで美織のせい?」
肩を落とし瞳を潤ませる美織に、若菜は驚く。
「あのとき私がちゃんと若菜に伝えていれば、見て見ぬふりなんかしないでちゃんと対処しておけば、こんなことにならなかったはずなのに」
「ちょっと待って美織、あのときっていつのことを言っているの?」
「昨日、駅前の踏切を渡っているとき、『男の人の幽霊』の話をしたでしょ?」
「あぁ、うん。でも美織、あんなのでたらめだって」
「そうじゃないの。信じないって言ったのは『頭を探している男の人』ってこと。……だって、あのとき私見ちゃったんだもん。若菜の右足を掴んでいた、血だらけの、女の人の腕を……」
「……嘘」
「嘘じゃないよ。若菜、あの踏切に出るのは『なくした頭を探している、男の人の幽霊』じゃなくて、『戻る身体を探している、腕だけの女の人』なんだよ」
痣が消えるまでに、10日以上かかった。
若菜も美織もあの日以来回り道をして、踏切を通らないように下校している。
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