止めてあげる

2/2
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 待ち合わせた居酒屋でチューハイを二杯あけても、しゃっくりはまだ止まらない。騙されたと思って試してみるかと、彼女からもらったメモ用紙を取りだした。  店員に水を頼み、グラスの下にメモを置く。 「本当に止まるか賭けようぜ」  無責任に騒いでいる仲間たちをひとにらみし、グラスに口をつけようとしたとき 「ナニをしているんですか!?」  強い口調でいきなり止めてきたのは、水を持ってきてくれたアジア系の外国人らしき従業員だった。 「アナタ、死ぬ気ですか!? そんなことしたら、○××▼□を呼び出しちゃいますよ」 「は? 何? 何を呼び出すって?」  いきなり『死ぬ』だなんて物騒な言葉をぶつけられ、更に聞いたことのない語感の単語も飛びだし、俺は混乱する。 「○××▼□です。西洋の悪魔みたいなものです。ふざけてもそんなこと絶対しちゃダメです」  ブツブツとどこかの国の言葉を呟きながら、彼は仕事に戻っていった。 「止めてくれようとしたのは『しゃっくり』じゃなくて、おまえの『息の根』だったな」  シャレにならない状況を笑い飛ばしてくれようとしたのだろうが、茶化してきた仲間の言葉には、引きつった笑いしか出なかった。  その夜のうちに、メモと合鍵を彼女の部屋に送り付けた。  もう二度と会うつもりはない。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!