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待ち合わせた居酒屋でチューハイを二杯あけても、しゃっくりはまだ止まらない。騙されたと思って試してみるかと、彼女からもらったメモ用紙を取りだした。
店員に水を頼み、グラスの下にメモを置く。
「本当に止まるか賭けようぜ」
無責任に騒いでいる仲間たちをひとにらみし、グラスに口をつけようとしたとき
「ナニをしているんですか!?」
強い口調でいきなり止めてきたのは、水を持ってきてくれたアジア系の外国人らしき従業員だった。
「アナタ、死ぬ気ですか!? そんなことしたら、○××▼□を呼び出しちゃいますよ」
「は? 何? 何を呼び出すって?」
いきなり『死ぬ』だなんて物騒な言葉をぶつけられ、更に聞いたことのない語感の単語も飛びだし、俺は混乱する。
「○××▼□です。西洋の悪魔みたいなものです。ふざけてもそんなこと絶対しちゃダメです」
ブツブツとどこかの国の言葉を呟きながら、彼は仕事に戻っていった。
「止めてくれようとしたのは『しゃっくり』じゃなくて、おまえの『息の根』だったな」
シャレにならない状況を笑い飛ばしてくれようとしたのだろうが、茶化してきた仲間の言葉には、引きつった笑いしか出なかった。
その夜のうちに、メモと合鍵を彼女の部屋に送り付けた。
もう二度と会うつもりはない。
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