彼女と私

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千里ニュータウンは大阪北部にある、六〇年代に開発された街だ。千里オールドタウンと揶揄されるほど寂れたこともあったらしいが、当時の建物は建て直されたりリノベーションされたりして、郊外の住宅街という性格は今も健在だ。 山を切り開いてつくられた街を構成するのは、緑地、池、公園、住宅、マンション。私が住んでいたところは特にマンションが多く、端正に並んだそれらは、街全体をシャープにみせた。学校からの帰り道、私はよく上を向いて歩いた。赤く染まる空。そこにそびえるマンションたち。そのベランダ一つ一つが夕日に照らされている様子をみては、そこに住まう人々の生活に思いを馳せたりした。あれはとても人間らしい光景だったと思う。 千里ニュータウンから私が通うことになった東嶺女子高校までは電車とバスで1時間強かかる。遠いといえば遠いけれど、近いといえば近い。普通に通える距離ではある。でも私はこの街から出たかった。ダメもとで入寮を申し込んだところ、希望者が少なかったようで私はその枠に滑り込むことができた。 さよなら山田千里。
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