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「昔むかしある所に、貧乏な少年がいた。
いつものように物乞いをしていると、裕福な身なりの紳士が近付いて来た。
『君は毎日ここで物乞いをしているね。なんでだい?』
『だって僕、貧乏だから。パンを食べなきゃ生きていけないけど、買うお金がないんだ。今日中に今日の分のパンを、明日が来れば明日の分のパンを買う。それで生きていけるんだ』
『それはちょっと違うな』
紳士は一冊の本を少年に差し出した。
『パンは一時しのぎでしかないし、明日手に入るかもわからない。
君に必要なのは今日を生きるパンではなく明日を食らう本だ。文字や知識は君が忘れないようにしている限り持ち続ける事が出来るし、ただ生きるのではなく生き永らえるのに役立ってくれる』
パンを食べる傍ら本を読むようになった少年は、気が付けば文字を覚え、大人に混じって働けるようになっていた。
物乞いをしなくても、その日のパンを買えるようになったのだ」
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