非-我について

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子供が生まれ、そして死んだ。つい一週間ほど前のことだ。生まれてくるはずだった女の子は、「しのぶ」と名付けられて戸籍に登録されるはずだった。虚無や苦痛や絶望にびっしり取り囲まれたこの世界を堪え忍んで生き抜いてほしいと思ったから。だが「しのぶ」は、死産という形でこの世界に産み落とされるのを拒否した。賢者は死にたいと願うが、本物の賢人はこの世に生まれてくるべきではなかったと後悔する。
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