第3章 幸せな日々

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第3章 幸せな日々

「まこちゃん」美穂は僕をそう呼んだ。はじめは馬鹿にされてるみたいだったがすぐに心地よくなっていった。こう呼ぶのは僕の母親だ。その事を話すと美穂は「それなんか、いい、そう呼ぼう」と笑って言った。毎日が幸せだった。かつて付き合った女性たちとは明らかに違う。今までの自分の人生が陳腐に感じる程、美穂といると幸せだった。 美穂もそう思っていたと信じている。お互いに時間が許す限り一緒にいた。色々な場所に行き、色々な事を一緒に共有できる。お互いの事を理解し、支え合える、それが僕らには重要だった。 美穂が大学を卒業して実家に帰る事になった時も、それ程遠くないのにもかかわらず美穂は両親に駄々をこねた。僕はそれをなだめてやっと了承した程だった。美穂が決まった就職先が明らかに実家から通った方が良かった。一人暮らしも大学だけと言う両親との約束だとも聞いていた。 それくらい僕の事を思ってくれている事が僕には嬉しい事だった。 美穂の両親に紹介された時、緊張のあまり足が痺れて立てなくなり皆んなに笑われた事を思い出す。 「いい人、見つけたわねって、母さんが言ってた」 「そう、俺、いい人、だろ?」 「うん、まこちゃん、大好き、まこちゃんは?」 「もちろん、世界一幸せな男」 そう、僕はあの頃本当にそう思っていた。 僕らの未来は薔薇色だったはずだ。 この幸せが永遠に続くと思っていたんだ。
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