一枚の写真

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あの時、何で言わなかったんだろう。 本当は君のせいで顔が赤くなったんだって。 今更後悔したって時は戻らない。 コンテストの締め切りから数日後、僕らの住む地域を襲った大きな地震で色んなものを失った。 家も、学校も、友達も…そして、君も。 でも、幸いにも失わずにすんだものもある。 こうして遺っていた一枚の写真で、僕はあの日あの時の君を鮮明に思い出せる。 最初で最後となった、雪のように白く綺麗な君のことを撮ったこの写真のおかげで。 もっと色んな君を撮っておけば良かったな。 笑っているのも、怒っているのも、泣いているのも。 そうすれば、この写真と同じように鮮明に思い出せたかな。 ただ一つ、写真が無くてもはっきりとしているものだってある。それは君への想い。 遅いって言われるかも知れないけど、伝えて良いかな、僕の気持ち。 「……大好きだよ。」 小さく掠れた声と共に、手元の写真へ一粒の雫がこぼれ落ちた。
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