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「いや、冗談ではないのだが……」
「アハハハハハ、先輩おもしろ~い!」
先輩が何か呟きかけたようだったが、真奈はそれを気にすることもなく、さらにわざとウケ続けた。
ガタン…。
と、そんな時、不意に彼女の背後で入口のドアが開く。
「梨莉花さん、やってきたヨ! うちの部費少なくした生徒会のヤツら弱るようニ、議会室ノ周り、風水的呪物ノ配置してキタ」
開いたドアの向こうからは、なんだか少し奇妙な話し方をする女の子が入って来る。
小柄で、髪を左右に分けてお団子に結った、ちょっと幼い感じのする少女である。
「うむ。ご苦労だったな」
そのツインお団子ロリータ少女の方を振り返ると、美人の先輩は満足したようにそんな労いの言葉を彼女にかける。
年下っぽい見た目だけど、今の遣り取りから察するにどうやらこの人も部の先輩みたいい……ってか、今、なんか聞き捨てならないこと口走ってたよね?
「ん? 梨莉花さん、この人、誰カ?」
先輩達の会話にそこはかとない不審感を抱く真奈だったが、そんな彼女の存在にロリータ少女がふと気付く。
「ああ、新入部員の方だ。えっと、名前は……宮本まーなさんだ」
その問いに、美人の先輩は真奈が署名した誓約書に視線を落としてそう答える。言いやすいせいか、やっぱり彼女も〝まーな〟と音便変化させて呼んでいる。
「あ、あの……この部の先輩の方ですよね?」
自分抜きに話を進められ、真奈は美人の先輩とお団子頭の娘を交互に見比べながら、おそるおそるどちらにともなく尋ねた。
「ああ、そうか。自己紹介もまだしてなかったな。すまない。私は3年A組の神崎梨々花。この部の部長をやっている」
「あ! そうだったんですか?」
そっかあ……この人が部長さんだったんだあ……梨莉花さんっていうのかあ……。
名前もカワイイな。すっごく美人だし、物腰や言葉遣いも凛々しいし、カリスマ性に富んだ、まさに美術部の部長に相応しいって感じの人だなあ……。
その絶世の美人が部長と知るや、真奈はうっとりと、彼女の丹精に造形された顔にしばし見惚れる。
「それからこっちは二年の李梅香。台湾人だ。今は親の仕事の都合で日本に住んでいる」
ああ、なるほど。それでちょっとイントネーションがおもしろかったのか……。
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