壱 美術部 NEXT TO THE DOOR(2)

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「いや、冗談ではないのだが……」 「アハハハハハ、先輩おもしろ~い!」  先輩が何か呟きかけたようだったが、真奈はそれを気にすることもなく、さらにわざとウケ続けた。  ガタン…。  と、そんな時、不意に彼女の背後で入口のドアが開く。 「梨莉花さん、やってきたヨ! うちの部費少なくした生徒会のヤツら弱るようニ、議会室ノ周り、風水的呪物ノ配置してキタ」  開いたドアの向こうからは、なんだか少し奇妙な話し方をする女の子が入って来る。  小柄で、髪を左右に分けてお団子に結った、ちょっと幼い感じのする少女である。 「うむ。ご苦労だったな」  そのツインお団子ロリータ少女の方を振り返ると、美人の先輩は満足したようにそんな労いの言葉を彼女にかける。  年下っぽい見た目だけど、今の遣り取りから察するにどうやらこの人も部の先輩みたいい……ってか、今、なんか聞き捨てならないこと口走ってたよね? 「ん? 梨莉花さん、この人、誰カ?」  先輩達の会話にそこはかとない不審感を抱く真奈だったが、そんな彼女の存在にロリータ少女がふと気付く。 「ああ、新入部員の方だ。えっと、名前は……宮本まーなさんだ」  その問いに、美人の先輩は真奈が署名した誓約書に視線を落としてそう答える。言いやすいせいか、やっぱり彼女も〝まーな〟と音便変化させて呼んでいる。 「あ、あの……この部の先輩の方ですよね?」  自分抜きに話を進められ、真奈は美人の先輩とお団子頭の()を交互に見比べながら、おそるおそるどちらにともなく尋ねた。 「ああ、そうか。自己紹介もまだしてなかったな。すまない。私は3年A組の神崎梨々花(かんざきりりか)。この部の部長をやっている」 「あ! そうだったんですか?」  そっかあ……この人が部長さんだったんだあ……梨莉花さんっていうのかあ……。  名前もカワイイな。すっごく美人だし、物腰や言葉遣いも凛々しいし、カリスマ性に富んだ、まさに美術部の部長に相応しいって感じの人だなあ……。  その絶世の美人が部長と知るや、真奈はうっとりと、彼女の丹精に造形された顔にしばし見惚れる。 「それからこっちは二年の李梅香(リメイシャン)。台湾人だ。今は親の仕事の都合で日本に住んでいる」  ああ、なるほど。それでちょっとイントネーションがおもしろかったのか……。
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