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そして、美人部長の紹介に今度はお団子頭の娘の方に視線を移すと、納得といった様子でうんうんと頷いてみせた。
「ハジメマシテ。ワタシは李梅香だヨ。どぞ、ヨロシク!」
「あ、ど、どうも。え、えーと、ニーハオ…」
「アハ。大丈夫、日本語、ホトンドわかるから。言葉の心配は要らないヨ」
「あ、はい…ハハハ……」
ガタン…。
不意に訪れた慣れぬ中国語圏の外国人(しかも年下に見えるけど先輩という複雑な設定…)とのコミニュケーションにドギマギする真奈であるが、するとそこに、またしてもドアが開き誰かが入ってくる。
「はぁ~疲れた。おい、言われた通り、うちの部費削れなんて提案した会計のバカに調伏の修法施してきたぜ? かなり労力使ったんだからジュースぐらいおごってくれよな」
今度入ってきたのは口の悪い男子だった。
まず目に止まったのはその頭である。短く刈り上げた髪を鮮やかな赤色に染め、ツンツンと針鼠のように突き立てている。
制服もシャツの裾をスラックスから出してブレザーの袖ごと腕捲くりをし、手には数珠みたいなフォークロア調の腕輪を着けるといった自由な風体だ。
なんか不良っぽいというか、パンクな感じの人物である。
「それが先輩に対する態度か? おまえも梅香を見習って少しは後輩らしくしろ」
梨莉花部長はその礼儀知らずな言い様に、呆れた表情で男子を見つめて注意する。
「だから、ちゃんと部長の指示通りにしてきたじゃねーかよ。おかげでもうヘトヘトだぜ。な、だからなんか飲ませてくれ。80円のパックのやつでいいからよ。そう、イチゴミルクがいいな」
「ハァ…まあ、おまえの態度の悪さは今に始まったことじゃなし、ちゃんと命令は遂行してきたようだから許してやるか……」
「…ん? 誰だ? そいつ」
もう諦めたという顔をして、溜息混じりにポケットから財布を取り出す梨莉花だったが、そのパンクな男子も話の途中で今さらながらに真奈の存在に気付く。
「ああ、新入部員の宮本まーなさんだ。宮本さん、こいつは二年の金剛寺相浄だ。こんな形だが、こいつも一応うちの部の一員だ」
……見た目に一般的な美術部員のイメージとはだいぶかけ離れてる人だけど……このパンクな格好からして前衛アートでもやってる人なんだろうか?
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