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再び戻って〝こちら〟の部室でも、真奈と先輩達は親交を深めるべく大いに語り合っていた。
「――あの、金剛寺先輩はその、なんというか、前衛アートか何かをやられてるんですか?」
「ん? 前衛?」
「い、いえ。とってもアーティスティックな格好をされてるんで、そうなんじゃないかなあと……」
「前衛ねえ……んま、この業界じゃ前衛的といえば前衛的かもしんねえなあ」
やっぱり。あたしの思った通りだ。こう見えてもあたしはけっこう、人を見る目があったりするんだぞ?
真奈は相浄のパンクな服装を見つめ、自分の観察眼に自信を強める。
「李先輩…なんか言いづらいな。あの、先輩はやっぱり山水画とかをやられるんですか?」
「梅香でいいヨ。それニ、ワタシやってるのハ〝山水〟じゃなくて〝風水〟だヨ」
次に真奈は梅香へ質問するが、彼女が答えたのはなんだか聞き慣れぬ美術用語である。
風水? ……というと、あの家具の配置とかで運気を上げたりするやつしか思い浮かばないんだけど……風水画なんてのがあるのかな? 初めて聞いた。日本じゃ聞かないけど、台湾にはそういう絵があるのかもしれない。
「すみません。勉強不足で……じゃ、神崎先輩は何が専門なんですか? 絵ですか? それとも彫刻とか?」
「絵? ……いや、仏画や曼荼羅とかを描くのはあまり得意ではない。一応、私は洋の東西を問わず、あらゆる呪術・魔術を習得することに努めているがな」
「じゅじゅつ? ……何ですかそれは?」
「何って、呪術は呪術だ。深い意味はない」
「すみません。あたし、まだそんなに美術の知識とかなくてよくわかんないんですが、それは何かの絵の描き方ですか? それとも立体像の制作方法とか?」
「ん? ……いや、普通に〝おまじない〟のことだが?」
自分の無知を謝る真奈だったが、梨莉花はひどく怪訝な表情を浮かべて、こちらもナニを言ってるのかよくわからない様子で真奈の方を見つめ返す。
「ああ、なんだ、おまじないのことかあ………え? おまじない?」
「さっきからどうも話が変だと思っていたが、何か勘違いをしてはいないか?」
「えっ? ……いや、だって、ここって美術部の部室ですよねえ?」
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