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入学式より二日後、明けて翌週の月曜日……。
まだ、ひんやりとした朝の空気が漂う急な坂道を、今日も大勢の生徒達が蟻のように行列をなして登って行く。
ここ、神奈備高校は神奈備町の中心に位置する神奈備山という小高い山の麓にある。
町のどこからでも目に留まるこの山は神の宿る神域として古代より崇められてきた聖なる山であり、今でももう少し坂を上がった所には神奈備神社があって、二千年以上も変らずにこの山の神が祀られている。
そんな聖なる山の麓にあるこの高校も、いうなれば神奈備山の神に護られているということになるのだろうが、そうした地理的条件のために毎日キツい坂道を登って登校せねばならず、そこがまあ、ナビ高生達が共通して感じているこの高校の難点である。
その傾斜度の高い坂道をいつものように登校する着慣れた制服の生徒達に混じって、真新しい制服に身を包む入学したばかりの新入生達の姿も見受けられる。
もちろん、その中には真奈と朋絵の二人の姿もあった。
「ハァ……憂鬱だ」
まだ今日も始まったばかりだというのに……そして、高校生活もまだ2日目を迎えたばかりだというにも関わらず、真奈はガックリと肩を落とし、周囲の空間を負のオーラで満たしている。
「もう、なんで部室を間違えるかなあ……」
朋絵は先日より引き続き、相変わらずの呆れ顔である。
「だって、名前が一字しか違ってないし、字が擦れてて読みにくかったんだもん……」
真奈はフグのように口を尖がらせ、項垂れたままブツブツと小声で言い訳をする。
「だとしても、となりにはっきり美術部って書いてあるんだから普通わかるでしょう!」
「だってぇ……ブツブツ…」
「それも、よりによって呪術部だなんて……まーな、幽霊とかオカルトって〝アレ〟なのにさ」
「そうなんだよ。よりにもよって、そっち系の部になんだよ……」
「ハァ…で、どうするの? 嫌ならちゃんと謝って辞めさせてもらいなさい」
「それができたら苦労しないよ……だって、あたしが辞めようとすると〝あ、起請文の誓約破って部を辞めたら、血反吐吐いてそのまま死ぬから〟とか言って脅すんだよ! あの人達のことだから嘘や冗談じゃなくてガチだよガチ! あたし、こんな若い身空でまだ死にたくないよお~……」
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