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溜息混じりにお説教する母親のような朋絵に、真奈は途中、梨莉花のものまねを無駄に織り交ぜながら自分の恐怖と苦悩を切実に訴えた。
「……た、確かに呪術部の人にそう言われたら、辞めるの少し考え直すわな」
なぜか入部届けごときで命の遣り取りをすることになっちゃっている稀有な友人に、朋絵は冷や汗を額に浮かべながら、ただただ苦笑する。
「じゃ、もうこうなったらいっそのこと、腹をくくって呪術部入るしかないね」
「うぅぅぅ……」
そのまるで他人事な、にべもない朋絵のアドバイスに、真奈はますますネガティブオーラ一色に染まっていった。
「それで、今日は部活あるの? 呪術部」
「うぅ……なんか、あたしの歓迎会のためにカラオケ行くとか言ってた」
「へえ、歓迎会開いてくれるなんて、意外といい人達じゃない? それに歓迎会、カラオケってとこはけっこう普通の人の発想だし。わたし、先輩達から呪術部の噂いろいろ聞いて、もっと危ない人達かと思ってたけど……」
「そ、そうかな? ……けっこう、普通かな?」
感心する朋絵のその言葉を聞き、少しだけ真奈の顔色も明るくなる。
「うん。きっと、普通の人達だよ」
「そ、そだよね! 別に危ない人達じゃないよね! うん。きっとそうだ。呪術の研究してるからって危ない人達とは限らないもんね。うん。そんな偏見は表現と信仰の自由を認めている文明国の人間としてよくない考えだよ。部員になったってぜんぜん平気だ」
そう言ってなんとか自分を納得させると、真奈はやっといつもの笑顔を取り戻した。
「……で、ちょっと気になったんだけど、その噂っていうのは?」
そして、笑顔とともに明るさを取り戻した真奈は、朋絵に一応そのことを確かめてみる。
「えっ? ……え~と確か、呪術部を廃部にしようとした生徒会の人間に呪いをかけて廃人にしただとか、化学部を乗っ取って錬金術部に換えようと画策しただとか、悪魔の召喚に失敗して教室一つ吹っ飛ばしただとか、それから…」
「うぅぅ~やっぱり入りたくないよお~! 朋絵、今日の歓迎会一緒に行ってよお~!」
「えっ? ……い、いやよ、わたしだって!」
「そんな殺生な~!」
「殺生って……も、もとはと言えば、あなたの自業自得でしょ!」
「うぅ~心の友なら一緒に行ってよぉ~!」
「だから、わたしはジャ●アニズミストじゃありません! ――」
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