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そして、その日の放課後……。
今度は間違えたわけではなく、自分の意志で訪れた呪術部の部室で、真奈は他の部員達と一緒に円卓を囲んでいた。
今日は入学式の日に来た時と違って窓のカーテンが開け放たれている。あの日は照明が蝋燭の明かりだけだったためによくわからなかったが、明るくなってみると、この部室の中には色々と珍しいものがそこここに溢れているようだ。
壁には曼荼羅や何か西洋魔術のものらしき図形を描いた壁掛け《タペストリー》なんかがかけられており、他方、窓際には黄色い八角形の鏡みたいなものが吊るされ、他にも赤い紙に金字で書かれたお札やらコウモリを象った飾り物やらと、風水関連と思しき中国趣味な品物があちらこちらに見受けられる。
また、部屋の奥に並べられた角机の一つには、小さな紫色の座布団を敷いた上におそらくは仏教法具であろう、歴史の教科書に載る空海の肖像画が手に持ってるような金色の武器らしき物体が置かれている。
「さて、先日いなかった者もいるので改めて自己紹介をしたいと思う」
部屋を彩る珍しい装飾品に真奈が気を取られていると、おもむろに梨莉花部長がそう切り出した。
現在、円卓を囲んでいるのは真奈を含めて6人。
その中には前回見えなかった顔も二つほど見える。たぶん、あの時話に出ていた〝清彦〟と〝飯綱〟とかいう人物であろう。
「まず、すでに言ったと思うが、私が現在、この部の部長をやってる神埼梨莉花だ」
改めて明るい所で見ても、この梨莉花という部長は超絶的な美人である。おそらくこの学校内美少女ランキング…否、県内ランキング…いやいや、国民的美少女グランプリでも1、2を争うレベルではないだろうか?
「まあ、私のことはもう充分承知のことと思うので、続いて飯綱君から始めてくれ」
そう告げて自身の紹介は簡単にすませると、梨莉花は右どなりの席に座る男子の方へとその切れ長の涼やかな眼を向けた。
その男子生徒はがっしりとした体格の大男で、頭は短目のスポーツ刈りである。
「えー…俺は3年B組の飯綱登というもんだ。一応、この部の副部長をやっている。昨日まで北陸の白山に登っていて今日帰って来たばっかりだ。ハッハー!」
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