弐 ドジっ娘 MEETS 奇人変人達(1)

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 飯縄は声も野太く、副部長に相応しい堂々とした風格である。しかし、その威圧感ある大柄な体格とは相反して、クリクリとした二つの目はとても優しそうな眼差しをしている。  例えるならば、『ハイジ』でいうところのオンジって感じだ。 「俺は山が好きだ。だから、もとは山岳部に所属していた。だが、1年の終わりに吉野の大峯山山上ヶ(おおみねさんさんじょうがたけ)に登った折、山頂で修験道の祖である役行者(えんのぎょうじゃ)が感得したという金剛蔵王権現(こんごうざおうごんげん)からの啓示を受けたのだ。〝おまえは修験の道を修めるのだ〟と。それから俺はそのお告げに従って、修験道の修行を始めたのだ。そして、より修験の勉強をするために山岳部を辞め、この呪術部の厄介になるようになったというわけだ。山のことで何かわからないことがあったら、なんでも遠慮なく俺に訊いてくれ。ガハハハ!」  ……なるほど。確かに風貌や態度などからしても山ボーイ…というか、山男っていう言葉がぴったりの人だ。  でも話の後半の、えっと…ざおーごんげん…だっけ? その神さまから啓示を受けた云々という下りはオカルト色満載だ。一見、ワイルドなアウトドア系だけど、やっぱりこの呪術部にいるだけのことはあるな……。 「次は梅香(メイシャン)、おまえだ。すでにおまえも会っているとは思うが、詳しい紹介はしていなかったからな」  梨莉花は次に、飯綱のとなりに座る李梅香(リメイシャン)に自己紹介するよう促す。 「ハイ。ワタシは2年C組の李梅香デス。パパの仕事の都合デ家族そろって台湾から日本来ました。パパの仕事ハ風水コンサルタント会社(株)のサラリーマン風水師デス。日本営業所の社員指導のため来マシタ。ワタシもパパから風水習ったんだヨ。だから少しハ風水のコト、ワカル。マダマダ修行足りないけどネ」  多少、アクセントや言葉遣いに変なところもあるが、彼女はかなり日本語が堪能のようである。  見た目もそんなに変わらないし、日本人に混じっていてもぜんぜん外国人とは気付かれないだろう。  だが、それでもよくよく顔を見てみると、やはり中華系の顔はしていて、うるうるとした円らな目がとてもカワイらしく、小柄だし、これは萌え萌えキュンになってしまう男子が続出すること間違いなしである。
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