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まあ、それはそうと、この部屋に飾られている風水グッズのレイアウトは彼女の仕業か……さすが風水が盛んな台湾出身。
でも、風水コンサルタントの会社なんて始めて聞いたな。世の中にはそんなものもあるんだ。世界って広いな。しかも〝(株)〟だし……。
「次、相浄」
続いて、梨莉花は自分の左どなりに座る金剛寺相浄を指名する。
「………………」
が、返事がない。彼はいい度胸にも梨莉花の催促を無視し、腕組みをして俯いたままだ。
「…スー……スー……」
さらに返事を待ちながら耳を澄ませると、どこからか穏かな息遣いも聞こえてくる。加えて、その規則正しい呼吸音に合わせて、彼の俯いた頭も上下しているではないか。
「ん? 相浄? 次はおまえの番だぞ…って、こら! 寝るなっ!」
パカンっ!
居眠りに気付くと、梨莉花は近くにあったノートを丸めて、相乗の頭を思いっ切り引っ叩いた。
「イテっ! ……な、何すんだよいきなり~」
「おまえ、今、寝てただろう!?」
「ね、寝てねえよ。……ちょっと瞑想してたんだよ」
「嘘付け!」
「嘘じゃねえよ」
……いや、嘘だ。
「ああ、ももいい。それより、次、自己紹介おまえの番だ」
「あ? ……あ、ああ、わかってるよ、そんなこと」
……いや、完全に寝ていて、今、初めて知ったに違いない。
そうして真奈が心の中でツッコミを入れている内にも、相浄は覚醒して間もない頭で話し始める。
「あ、ああ……えっと、この前聞いたとは思うが、俺は2年A組の金剛寺相浄だ。見ての通りに俺の家は寺だ」
えぇ? ……い、いや、ぜんぜん見ての通りじゃないって……髪の毛真っ赤だし、見てくれからじゃ、どこをどう見たってお寺の息子さんには見えないよ!
「うちの寺は天台宗の金剛寺っつう寺で、俺も一応坊主のたまごだ。だから俺の専門は台密――つまり天台密教の修法だな。東密…ああ、真言密教の修法も多少ならわかるけどな」
俄かに信じ難い事実ではあるが、どうやら本当にお寺の息子さんらしい……が、このどう見てもお坊さんとは結びつかないパンクな形……確かにお坊さんとしては前衛的である。
その点からすれば、あたしの見解は一応当たっていたな、はは…。
真奈は、微妙に的を射ていた自分の観察眼になんだか複雑な自信を抱いた。
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