壱 美術部 NEXT TO THE DOOR(1)

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「いや、でも、その友達の子、思い込みが激しい上に方向音痴でよく迷うし……やっぱり、ここで待ってた方が……」 「な~に、こんな狭いとこで迷う人間なんていないって。それに中にいたってその子が来ればすぐにわかるし。その子、ここの場所は知ってるんでしょ?」 「あ…はい。まあ……」 「なら心配いらないって。さっ、入った入った。今日は特別、ケーキも用意してあるんだから」 「えっ! ケーキ! ……そうだよね。いくらまーなでも、こんなとこで迷ったりはしないよね……」 「さ、早く早く!」 「あ、はい。じゃあ、お言葉に甘えて……」  とはいえやはり心配になり、朋絵は振り返って廊下の先を見つめてみたが、結局は「ケーキ」という名の女子を魅惑してやまない甘美な響きに勝つことができず、迷いながらも部室の中へと入って行った……。
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