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「青井先輩、重ね重ね申し訳ないのですが、そろそろ時間なので兄のこと一旦お願いしていいですか?」 華奢な手首にしていた腕時計を見ると、焦った様子で今にも走り出しそうだ。 「出番?いいよ、元々恵くんのことは見ておくつもりだったから」 「ありがとうございます!すみません、すぐ戻りますので!」 勢いよく頭を下げると、サラサラと髪をなびかせてトラックのある会場へと走り去って行った。 桐生のどこかいいのかよくわからないけれど、麗華ちゃんが良い子なのはよくわかる。 あんな子に好かれて、キョンとも仲が良くて、佐藤くんにも慕われている桐生は、一体何なんだろうか。 別の形で話していたら、私も桐生の良さに気づいたんだろうか。 そこまで考えて、無駄な時間だということに気づいた。 麗華ちゃんが立ち去ってしばらくすると、キョンから折り返しの電話がかかってきた。 説明しづらかったけれど、場所を教えてなんとなくわかってくれたキョンは寝起きの悪いという恵くんを引き取りに来ると言う。 恵くんの出番が近いのか電話を早めに切り上げたキョンはいつも先に切らないのに、珍しく先に電話を切った。
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