4人が本棚に入れています
本棚に追加
「青井ー!」
走ってきたキョンに手を振る。
「お疲れー」
「なんでいるんだよ」
「応援にきたの」
「応援って、ココでかよ」
「さっき佐藤くんの出番は終わったから。いいでしょ、しばらく休憩くらい。また時間になったら動くよ。アナウンスもかすかに聞こえるし」
いつもとは違う場所とお互い制服を着ていないせいか、少し私のテンションもおかしくて、自然と明るく答えていた。
そんな私を見て、キョンがわざとらしく大きくため息をつく。
「心配して損した」
恵くんを少し真ん中へ追いやり、狭いスペースに勢い良く座るキョン。
「心配?」
「さっきうちの学校のヤツらもいたし、てっきり」
いじめられてると思ってた、とキョンが言おうとしていることを難なく感じ取れ、先に質問をする。
「もしやられてる現場に出くわしたら、どうするつもりだったわけ?」
「そりゃあ助けるに決まって」
「へー」
「あ、ちげぇよ!途中で割って入ったりするつもりはなかったからな!」
睨む私の視線に気づいたのか、言い直すキョンにニコリと微笑む。
「前回のこと、復習してないな」
「いや、だから」
しどろもどろになる可愛いキョンを見たところで息を吐き、キョンの頭をガシガシッと撫でる。
「ありがと。恵くんの出番が近いのかと思ってたけど、私のことも考えてくれてたわけね。学校じゃないし、紙一重な優しさに感謝するわ」
「おぅ」
少し照れるキョンを見る。
競技を終えたのか、終えてないのか知らないけれど、ランニングに短パン姿。
そういえば、キョンが本番で走ったところを見たことない。
噂では風のように駆け抜けるって聞いたことがある。
聞いた時は少しバカにしたけど、息を飲むほど速いらしい。
キョンがしてくれた行動はきっとときめきものなんだろうけれど、私はやっぱり佐藤くんにしか激しくときめかない。
最初のコメントを投稿しよう!