7

6/13
前へ
/76ページ
次へ
「青井ー!」 走ってきたキョンに手を振る。 「お疲れー」 「なんでいるんだよ」 「応援にきたの」 「応援って、ココでかよ」 「さっき佐藤くんの出番は終わったから。いいでしょ、しばらく休憩くらい。また時間になったら動くよ。アナウンスもかすかに聞こえるし」 いつもとは違う場所とお互い制服を着ていないせいか、少し私のテンションもおかしくて、自然と明るく答えていた。 そんな私を見て、キョンがわざとらしく大きくため息をつく。 「心配して損した」 恵くんを少し真ん中へ追いやり、狭いスペースに勢い良く座るキョン。 「心配?」 「さっきうちの学校のヤツらもいたし、てっきり」 いじめられてると思ってた、とキョンが言おうとしていることを難なく感じ取れ、先に質問をする。 「もしやられてる現場に出くわしたら、どうするつもりだったわけ?」 「そりゃあ助けるに決まって」 「へー」 「あ、ちげぇよ!途中で割って入ったりするつもりはなかったからな!」 睨む私の視線に気づいたのか、言い直すキョンにニコリと微笑む。 「前回のこと、復習してないな」 「いや、だから」 しどろもどろになる可愛いキョンを見たところで息を吐き、キョンの頭をガシガシッと撫でる。 「ありがと。恵くんの出番が近いのかと思ってたけど、私のことも考えてくれてたわけね。学校じゃないし、紙一重な優しさに感謝するわ」 「おぅ」 少し照れるキョンを見る。 競技を終えたのか、終えてないのか知らないけれど、ランニングに短パン姿。 そういえば、キョンが本番で走ったところを見たことない。 噂では風のように駆け抜けるって聞いたことがある。 聞いた時は少しバカにしたけど、息を飲むほど速いらしい。 キョンがしてくれた行動はきっとときめきものなんだろうけれど、私はやっぱり佐藤くんにしか激しくときめかない。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加