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「何やってるんですか?」
私の大好きな声が降ってきたからだ。
「佐藤!?」
私より早く、キョンが振り返り反応する。
「2人とも離れて下さい」
至近距離にいる私とキョンの状況は傍から見ると更に最悪だ。私から離れ、立ち上がるキョンの顔色は良くない。
「佐藤、これは」
「言い訳は結構ですよ、矢代先輩。理由はわかっていますから」
「は?わかってるってどういうことだよ」
「というより、今確信しました。矢代先輩が青井さんの拠だったんですね」
「拠?」
キョンが頭を抱える。
今のはキョンに言ったんじゃない。
私に言っている。
自分を隠し通すなんて、所詮無理な話だ。
キョンの気持ちさえも知っていそうな佐藤くんなら、私のことは全て知っている、かもしれない。
「拠、か。表現が佐藤くんらしいね」
精一杯の笑み。
顔を崩すと、心が簡単に壊れそうで一生懸命とりつくる。
「合ってましたか?」
「佐藤、お前勘違いしてんじゃねぇの?俺がただ青井のこと好きなだけで」
「響、いいの。ありがとう」
今まで十分に付き合ってきてくれたキョンは、言いたくないことまで言って私を守ってくれようとしている。
後輩に惨めな姿を見せてまで、私を庇うなんてホントバカだな、キョンは。
「何言ってんだよ」
キョンの困った表情に微笑む。
「佐藤くん、今日時間作れるかな?ちゃんと話したいんだ、私のこと」
「帰り、待っててくれますか?」
「うん、もちろん。ということで、とりあえず2人とも戻らなきゃ。恵くんを探しに来たんじゃないの?」
抜け出してきてくれたことは嬉しいけれど、競技を終えた桐生がサン人いなくなっているのに気づいたら、きっと怒り狂うはず。
その理由がいくら恵くんといえど、一緒に居たのが私だと知ったら、余計にひどくなるだろう。
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