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応援席に誰もいなくなった競技場で見る夕焼けがやけに感傷的にさせる。 妙に孤独感があって、このまま消えたいとか思ったりして、バカバカしくなる。 人間はそんなに脆くなくて、ただ誰かに必要以上に構ってほしいだけ。 「お待たせしました」 「お疲れさま」 赤く染まっていくかいかないかの空をバックにして、私は振り向く。 さっき電話で連絡があった人は目の前にいる。 昼間、あんなに多かった応援席が嘘の様。 二人で話す時間をくれたかのように、私たち以外誰もいない。 とても静かで、とても穏やかになれる。 これから起こることを予測できていないせいなのかもしれない。 私に近付き、真正面に立つ佐藤くんはシャワーを浴びたてらしく、石鹸の香りが漂う。 まだ髪が濡れていて、やけに色っぽく見えて、ドキドキする。 そんな余裕は一切ないはずなのに。 佐藤くんがこの場所へ来るまで随分時間があったのだから、話はまとめておくはずだった。 それでも言葉をまとめきれなかった。 「緊張しないで下さい。一つ質問に答えてくれれば、それでいいですから」 まただ。 佐藤くんは私が口を開けなくて、話しだすまでに時間がかかりそうだと思うより早く切り出した。 あの夏祭りの夜のように。 一つだけと言ったけれど、私が隠していることは一つどころじゃない。 嘘に嘘を重ねているのだから。
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