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「僕のこと、好きですか?」 聞き返そうするより早く、佐藤くんから言われたたった一つの質問に答えていた。 なんでその質問なの?、って言うより早く、自然と口にしたのは最も正しい答え。 「好きだよ。好きすぎておかしくなりそうに好き」 「僕も夕香さんが思っているより、ずっと好きです」 不意打ちだ。 見事返り討ちにあってしまった。 足のつま先から頭上まで一気に熱が高まる。 「口半開きですよ」 「聞きたいことは山ほど、あるんじゃないの?」 クスッと笑い私を見る佐藤くんに可愛くない質問をする私。 それでも、そう聞く他に手がない。 「ありますよ。ただ、それは確認作業にしかならないので」 「全部お見通し、ってこと?」 「それ以外に何かありますか?」 質問返し。 今までの私はまったく無意味だったとしかいえない。 佐藤くんの自信たっぷりの顔に、胸の痛みはひどくなる一方。 「夕香さん」 「何?」 「一つ、約束して下さい」 佐藤くんの手が真っすぐ伸びてきて、何をされてもいいと思っている相手なのに思わずビクッとする。 「もう誰にも触れさせないで下さい。夕香さんは僕にしか触れられちゃいけない」 佐藤くんが私を包み込む腕が優しすぎて、抱きしめ返すこともできず、立ち尽くすしかできない。夢?夢なら一生覚めないでほしい。 「私、いじめられてるんだ」 「はい」 「今まで素じゃなかった」 「はい」 「・・・別れなくて、いいの?」 「別れるつもりありません」 夢のような感覚は私の心を柔らかくして、今まで隠していたことが嘘のようにポロポロと口から出て行く。 佐藤くんの腕の中が苦しいとさえ感じ、生温かい涙は次から次へと溢れることをやめな い。 佐藤くんを失わなければそれでいい、だなんて所詮それは表向きで、本当はずっとずっと・・・私という存在をちゃんと知ってほしかった。 ゆっくりと確かめるように、指先から佐藤くんの背中に触れていく。 手の平が完全に佐藤くんに触れた時、それはゆっくり丸くなり、Tシャツを思い切り握り締めた。 涙が止まらなくて、小さい子供のように声をあげて泣きだしてしまった私をあやすように、佐藤くんの片手は頭のてっぺんを撫でたかと思えば、髪を滑り、頬を包み、涙を拭う。 もう片手は肩を抱き、ギュッと引き寄せられる。 涙は増すばかりだった。
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