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『なぁ、それって佐藤マジでカッコ良くねぇ?』 「うん、かなりカッコ良すぎ」 『ありえねぇ』 「うん、ありえない話だよね」 深夜一時をまわろうとしている。 そんな時間の話相手はキョン。 夜電話をくれると言ったものの、私から掛けるつもりだった。 しかし、結局行動の早いキョンからの電話となった。 内容を話すだけで、長電話になっている。 ベッドの上で何度寝返りをしたのか、わからない。 『なぁ、佐藤って一体どこまで知ってんの?』 「全部じゃないのかな」 『俺って結局佐藤に負けんのかよ』 受話器越しで何度もため息をつくキョン。 それがおかしくて笑い出す私。 『ったく、笑いごとじゃねぇよ。なぁ、今からちょっと真剣に聞けよ』 「ん?」 一仕切り笑うと、ベッドの上で横になっていた体勢を起こす。 声には出ないものの、ニヤけが止まらない。 まだ笑いの波があるようだ。 『佐藤より、』 佐藤、という名前で正気に戻る。 『俺の方が青井のこと好きだからな』 布団に足をすりつけるのは癖だ。 電話というものは落ち着かないせいか、身体のどこかを動かさずにはいられない。 そのモソモソと仕切りに動いていた足が、キョンの四度目かの告白のおかげでピタリと止まる。 「また、急にだね」 どういう心境の変化か、明らかに今日の昼間からキョンがますます積極的になっている気がする。 『なんか俺バカみてぇ、って思えてきたんだよ』 「そう?私はバカを拠にはしないから、キョンがバカだと困るんだけど。親友やめなきゃ」 『親友?』 わざと強調した言葉に見事引っかかるキョン。 気持ちは嬉しいからこそ、話は変える。 いくらキョンに佐藤くんが一番だと言っても効き目がないことくらい、さすがに気づいている。 私があまりにも言いすぎて、麻痺しているのかもしれない。
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