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「夕香さん」
冷静にそう呼ぶ、佐藤くんの声。
二人きりの時にしか呼ばない私の名前。
「言い逃げ、だったね」
「誤魔化さないで下さい」
「ごめんなさい。でも、響は親友なの」
武者震いする。
嬉しくて、嬉しくて、下腹部がキュッと締めつけられる。
約束を破ったと責められることで、嫉妬してくれているんじゃないか、と佐藤くんの気持ちを確かめているようだからだ。
趣味が悪いと罵られても、構わない。
嬉しいものは嬉しい。
「親友が例え同性でも駄目です」
再び感じる下腹部のキュッとなる締めつけ。
愛しくて堪らない人、私に甘い感情をもたらす人。
どうしたら、この溢れる想いを全て伝えられるのだろう。
キョンには悪いけど、本当に佐藤くんが好きだ。
見つめ合う、この時間が好き。
生温い風が私のスカートを揺らし、髪の毛をなびかせる。
佐藤くんの影が私を覆い、朝日が佐藤くんだけを照らす。
私の視界には佐藤くんしか捉えられなくなる。
二人だけの世界になった感覚が武者震いとなり、自然と目を閉じた瞬間、さっきまでキョンがいたことを忘れてしまうようだった。
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