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だから教室で“みんなの人気者の拓也”が、風変わりな彩斗に声をかけてこないのも普通だと思っていたし、不満も無かった。
むしろ、二人だけの秘密の関係ようで優越感すら感じていた。
彩斗は無造作に置かれている、既に完成している標本を手に取り、アクリル絵の具やマニキュアで彩飾を施していく。
ドット柄のカブトムシ
グラデーションのクワガタ
ツートンカラーのコガネムシ
彩斗は昆虫に色を乗せるのが好きだった。
小さなローテーブルを挟んで
笑って命を奪う拓也と
笑って死骸を蹂躙する彩斗。
インモラルではあるが、
裁かれることもない遊びを
二人はデスクのライトだけが付いたほの暗い部屋の中で楽しんでいた。
ふと、彩斗は壁に飾られている物に気が付いた。
「拓也、あれなに?」
「……ああ、カラスアゲハの標本だよ」
「珍しい。殺すばっかりでその後は見向きもしないお前が、標本を飾るなんて……」
「キレイだろ?なんか、彩斗に似てない?」
「え?そう?」
「ああ、キレイだ……」
「……俺に似てる……か……」
「……あ、いや……」
彩斗はずっと聞きたかったことを口にする。
「……ねえ、何で俺と仲良くしてくれるの?」
「……」
「何で俺にだけ、その趣味見せてくれるの?」
「……」
「……もしかして、俺のこと、好きなの?」
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