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拓也の親は海外に出張に出ていて、近所に住む母親の姉に食事などの面倒を見て貰っている。 交友関係が広い拓也なので、友人達の溜まり場になってもおかしくない環境だが、拓也の部屋に入るのは彩斗だけ。 拓也の部屋は異様だ。 所畝ましと小箱が積まれ、その全てに昆虫の標本が入っている。 拓也は標本作りが何よりも好きなのだ。 否、命を奪う過程が好きなのだ。 注射器でエーテルを流し込み、汚れを拭いて、防腐処理を施し、ピンで固定。 恋をしているかのようなロマンチックな表情で、静かに命を奪う。 「ほら見て彩斗、キレイにできた」 そして嬉しそうに彩斗に見せるのだ。 「本当、キレイだね」 狂暴で、凶悪で、そして無邪気な、クラスの皆が知らない拓也。 この時間だけは“自分だけの拓也” 『今夜やろうぜ』の合図で始まる拓也との夏の夜限定の昆虫採集、そして標本作りを、彩斗はとても楽しみにしていた。 二人のこの遊びは、一年生の夏休みから始まった。 彩斗も昆虫が好きで林に採集に行った時、ばったりと拓也と出くわしたのがきっかけだ。 その頃には学校の教室内では仲の良いグループが出来上がっており、拓也と彩斗が親しく接するタイミングは無くなってしまっていた。     
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