0人が本棚に入れています
本棚に追加
ただしっとりと、濡れた土があった。
雨は止んだ。だがその次は凍るのみ。
冬の朝方は息が真っ白。そっと地面を踏みしめれば、ミシ、ミシ、と固まった雑草から音がする。
湿った土と裏腹に、キンキンと詰め寄る冷えた大気。コートのポケットに手を入れて、ミシ、ミシ、と凍る道を行く。
木々を垣間見れば、堪え難そうに生えている。早く葉っぱが欲しいところだ。そう言っている。
まだかまだかとその時を待つ。日が差してきた。途端、足音はミチ、に変わる。白の吐息に光が加わる。朝焼けは眩しいが、相変わらず大気は冷えて、手はかじかんで、生き物達の営みを許さない。
その時は来たが、日は差したが、寒い。
まだかまだかと、更なる時を待つ。
うららかな日差しと桜を待つ。
ミシミシ鳴らない地面と、生きることを許さんとばかりの大気が鎮まり、優しく微笑むのをじっと待つ。
最初のコメントを投稿しよう!