湿潤

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 ただしっとりと、濡れた土があった。  雨は止んだ。だがその次は凍るのみ。  冬の朝方は息が真っ白。そっと地面を踏みしめれば、ミシ、ミシ、と固まった雑草から音がする。  湿った土と裏腹に、キンキンと詰め寄る冷えた大気。コートのポケットに手を入れて、ミシ、ミシ、と凍る道を行く。  木々を垣間見れば、堪え難そうに生えている。早く葉っぱが欲しいところだ。そう言っている。  まだかまだかとその時を待つ。日が差してきた。途端、足音はミチ、に変わる。白の吐息に光が加わる。朝焼けは眩しいが、相変わらず大気は冷えて、手はかじかんで、生き物達の営みを許さない。  その時は来たが、日は差したが、寒い。  まだかまだかと、更なる時を待つ。  うららかな日差しと桜を待つ。  ミシミシ鳴らない地面と、生きることを許さんとばかりの大気が鎮まり、優しく微笑むのをじっと待つ。
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