恨みの矛先

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「お待ちしておりました、神主さん」  僕はそう言って、背後の扉から姿を現した和装の男性に頭を下げる。  時間は夜の10時ちょうど。  今から此処――僕の所有しているビルの屋上で、この男性によるお祓いが始まるのだ。 「お待たせ致しました。さぞや大変だったことでしょう。ご心痛、察するにあまりあります。この霊は、しっかりと私が神の御許へと頂きましょう」  そう言うと、予め事前に設置して置いた祭壇へと向き直り、何やら呪文の様なものを唱え始める。神道のことは詳しくはわからないが、きっとあれが祝詞というやつなのだろう。  すると、神主が祝詞を唱え始めてから直ぐ、上空に小学生くらいの少女の姿が浮かび上がる。頭から夥しい量の血を流し、顔を激しい憤怒に歪ませた、酷く恐ろしい表情だ。  恐らく、あの少女が、このビルのテナントの人達を震え上がらせていた悪霊なのだろう。 「あいつだ! きっとあいつが悪霊なんだ! 神主さん、早く退治してください!」  少女を指さしながら、そう叫ぶ僕。  
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