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ユウタくんと私が出会ったのは去年最後の雪が積もった日だった。
大雪。
歩くのもやっとで仕事も休みになってしまえ、と思っていた願いは叶うはずもなく、かなり早めに家を出発した早朝だった。
公園の中に入ると、遊具の前に倒れている人がいた。
遠目だったし、暗いから見間違えかと思ったのに、近づくにつれ現実となった。
仰向けになって倒れている人。
顔が見えるくらい近寄った時に「あの、大丈夫ですか?」と恐る恐る声を掛けてみた。
若い男の子でちゃんと目を開けてて、驚いたのも束の間「大丈夫じゃないです…」と元気のない声の返事。
え、と思ったけれど我慢して「あの、立てないんですか?」「救急車呼びましょうか?」と続けて聞いてみれば「自分で立てるし、救急車もいりません…」と淡々と返された。
どういうことだよ、と心の中で呟くと「じゃあ、私仕事あるので行きますね。風邪ひくから早く起きて下さいよ」と捲くし立てると、その場を離れた。
早く家を出たのに、若い子の遊びに時間を取られたわ…とイライラと後悔しながら、歩きにくい雪の上をまた歩き出した。
「お仕事頑張って下さーい」と後ろから聞こえたさっきの声にビックリしながら、なんだったんだ…と疑問は膨らんで、会社に着くと忘れてしまった。
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