雪の降り積もった朝に

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ユウタくんと最後に会った前日、「お姉さん!オーディションに通った!」と大はしゃぎで抱きしめられた。 抱えられたまま、グルグルと回って、派手に転んだユウタくんに怒りながら「おめでとう!」と伝え、私の気持ちは静かに蓋をした。 私の戸惑いを気づかせてはいけなくて、いつものようにユウタくんの話を聞いた。 初めてあった頃のユウタくんとは違って、本当に楽しそうで喜びが滲み出ていた。 最後に会った日、笑顔でいつも別れる時間まで話を聞いて、別れる間際「ユウタくん、実は転職するの。だから、この道を使うのは今日で最後。今までありがとう。とっても楽しかった」と一方的に伝えた。 戸惑うユウタくんから目を背けて「応援してるからね!ユウタくん」と叫び、逃げるように走って、仕事場まで駆けた。 「お姉さん!待ってよ!お姉さん!」と背中に突き刺さる声にズキズキ痛む胸を押さえて、久しぶりの全力疾走だった。
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