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春はもうすぐだというのに、降り積もった雪。
ユウタくんと出会った頃ほど積もってはいないけど、ついこの前の話なんだと感傷的になる。
元気にしているんだろうか。
毎日が楽しいといいけど…。
不安や悩みは誰かに打ち明けられているだろうか。
「お姉さん?」
いつのまにか遊具前に来ていた私は、気づけばずっと下を向いて歩いていたようで、目の前に男の子がいることに気がつかなかった。
お姉さんと聞こえて一瞬心臓は跳ねたけれど、お姉さんが私のこととは限らないのに、自分のことがバカだなぁと思いながら、横を通り過ぎようとした。
「お姉さん?ユウタのこと知ってるお姉さんですか?」
「え?あの、どちら様ですか?」
「うわ、ホントにいた!」
思い出に耽っていたのを邪魔したくせに、見事に私の質問をスルーしてガッツポーズをする目の前の人。
コレはイライラの種を生む遊具なのか、もしくは私の沸点が低いのか。
おかしいな。
あの日からカルシウムは取るように心がけているのに。
盛大にため息をつきながら、その人の横を通りすぎる。
よく見れば、マスクと帽子で顔もよく見えないし、恐い。
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