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「あー!ちょっ、と、待って下さい!」
大声でそう言いながら、背後から手首を取られた。
「え、は、離して下さい!」
まさかの接触だ。
反射的に振り切ろうとしても、手首からこの人の手は離れなかった。
しまった。
いつも気をつけているのになんで走り去らなかったんだろう。
あの日のように全力で走っていれば、こんなことには…焦った私の言葉はどもり、鞄を握りしめる手に力がこもる。
「お姉さんでしょ!?俺、カイリって言います!」
だから、お姉さんは山ほどいるでしょ!どう見ても若いもの。
なぜ自己紹介をする!
警戒心は深まるばかりで、瞬きするのも忘れてしまうくらい怖い。
どうしようどうしよう、と頭の中でグルグル回る。
そんな私を見て、焦ったのかすぐに言葉を続けたカイリと名乗る男の子。
「ユウタ!」
「え?」
「あー、その、ユウタのこと知ってますよね?」
一気に力が抜ける。
「ユウタくん?」
繰り返すように私がユウタくんの名前を呟くと、顔を覆っていたものを全て取ったカイリくんを見て、その場に座り込んだ。
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