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時期外れの転校生
その後、頼羅はぶすくれながら助手席に座った。隆子と祖母がお店の人にしきりにお礼を言っている。源五郎といえば、後部座席で少しうとうとしているようだった。
車に乗り込む前、頼羅は何だか腹がたって、捨て台詞のようにイタルに言った。
「それ、私も持ってる」
おじいちゃんには、誰にも言ってはいけないと言われていたけど、こんな風になっていたらきっともうわからないだろう。頼羅は何となくイタルを言い負かしたくて、そっと言ったのだ。
「そう」
イタルの方はこれといって驚くでもなく、ただ返事をしただけだった。そんな風にとりすました様子も頼羅をいらつかせた。
「早く帰らないと、宿題全然やってないや」
助手席で頼羅がぼやくと、後部座席に座っていた祖母が、何度目かのごめんねえ、と言った。頼羅はおばあちゃんにあやまってほしいわけじゃないんだけど、と、思ったけれど、何となくムカムカしていたので、何もいわずにシートに体を押し付けた。
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